北海道中膝栗毛

原発の後始末(幌延町)

原発論議の行く末は高度汚染物質の最終処分に行きつく。推進者はそれに触れないような、あたかも気付かれたり、思い出したりされないように振る舞う。一般の人や反対者はどちらかといえば原発事故のケースを主に心配する。

しかし、確率の低い、あるいは不確実性が高いかもしれない事故よりも確実にくる確かな危機が汚染物質の最終処分だ。

それに挑戦する人々の努力と同時に、原発政策の問題点を深く考えさせる施設が、北海道道北人口2,623人の幌延町にある。

幌延町は福井県からの入植者が明治32年開拓の鍬を入れたことの始まる。

北緯45度線上に位置する幌延町は酪農をベースとした町、人口2500人余りなのに対して、乳牛は4倍の1万頭を数える。

西に雄大な利尻富士を眺むサロベツ原野を抱えるとともに、町内丘陵部各地に広がる大牧草地の乾燥ロールの群れは見ものだ。鹿も鷲も現れる。

平成12年「放射性廃棄物を持ち込まない。使用しない。」を条件に、「幌延町における深地層の研究に関する協定」を北海道、原子力機構と3者で取り交した。


協定に伴って建設されたのが、「ゆめ地層館(幌延深地層研究センター)」

全く前知識がなく、幌延町の町はずれをドライブしていると、めったに見ることができない程珍しく、可愛いトナカイを見物することができる「トナカイ観光牧場」という施設を見つけた。訪れて、トナカイの見事な角と面白い習性を楽しみながら、ふと場外をみると、周辺に見慣れない光景がある。掘削残土の山だ、黒い覆いをかぶっているが周辺土地より一段高く盛られ、かなりの量だとわかる。

これは夢地層館の地下実験施設建設のために掘り出された土砂。


高レベル放射能汚染物質の最終処分には地下350mまで掘り下げた後に巨大な横穴をにが必要になる。その中に高レベル廃棄物をガラスと混ぜ合わせ、まず分厚いステンレスのカプセルに閉じ込め、さらに分厚い厚いコンクリートで覆い貯蔵するという。

毎年36億円超の投資が続いているということだ。

 

最新鋭特注機器

 

施設内は、実際に地下350メートルまで潜ることはできないが疑似体験できるようになっており、カプセルをコンクリートで覆う作業の訓練や、この実験のために特別に開発された機器の操縦など実施している作業を間近で見られ、見る限りではかなりオープンな施設だ。

この施設は是非見てほしい。見る価値がある。ある意味で人類の英知を集めた研究である。施設そのもの、そこで研究されている内容の知識もさることながら、同時に大きな問題を考えさせる施設だ。

まだ日本では最終処分の具体的計画が決定していない中でこの研究施設を許可したことが大変に難しいことであったであろうことは想像に難くない。それを決断した町の勇気には敬服する。


ただ、幌延町は、実際の最終処分場として廃棄物を持ち込むことを許していない、そして町の広報(HP含む)でも施設紹介にはものすごく積極的という感じには映らない現状、今後、この先どうなっていくのかという不安は尽きないだろう。

国として将来の最終処分の目処は立っていない。他国へ依頼、海洋投棄、宇宙投機、何れも不可能だろう。

また、新たに研究ではなく実際の処分地を決定することはできるのであろうか。こうしている間にも、原発が今後稼働が続くにしても廃棄するにしても高レベル放射性廃棄物は発生する。原発推進派であっても、反対派であっても避けて通れず建設を受け入れなければならないのが処分場だ。

原発のこと、技術、知恵、将来のこと、人類のこと、国家のこと、・・・・・・

考えるきっかけ、気づきのきっかけに出会える施設だ。